第4回今治シビックプライドスクール開催報告

「しまなみ海道・今治の自然と人文」

 

日時:平成22年1月19日(火)

午後6時30分~午後8時30分

場所:美須賀コミュニティプラザ

講師:愛媛県総合科学博物館 学芸員 小林 真吾

地理学とは

  地表・空間と自然環境・人間活動の関係を探る領域があります。今治でいうとどういう風に街が出来たか、人口はどれくらいか。どういう所に住んでいるか、交通体系はどうやって出来たか。そういったことを面的に捉えて行く、これら全てが地理学といいます。地理学の中には自然地理学、人文地理学等があります。地図の中から読み解く地図学、名産はどんなものがあるかを学ぶ地誌学。主に4つの学問があります。

地学的な視点

  土地を俯瞰するのが地理学の基本的は視点です。どんな形でも地図で表現できればそれは地理学と言えます。普段よく目にするのは道路地図、住宅地図です。特定の目的を持って作られた地図を主題図といいます。

様々な主題図から今治がどんな所か考察する

  「土地分類図」・・・表層地質図 浅いところが何で構成されているかを表現したもの。今治地域は花崗岩で構成されています。周りには風化した土壌があります。その南は和泉層群があります。これは堆積岩からなる地質です。そこでは化石がよく発見されます。その南ちょうど中央構造線が走っているあたりは変成岩です。伊予の青石が有名ですね。その南は久万層群があります。こういうふうに四国は帯状に地質が分布しています。

  次に「地形分類図」です。起伏の度合や山地、丘陵地帯等の区分です。例えば、和泉層群は丘陵地帯に区分されます。

  次は土壌の性質から区分した「土壌図」です。県内で一番多いのは森林土です。県内で多い真砂土は表現されていません。土に成りきっていない未熟土は岩が多い山地に多く存在します。

  「気象図」は空間として見た時に、面的な広がりはどうなっているかを示しています。波状の線で年間降水量によって区分されています。今治は1200mm~1400mmの降水量です。県内で一番降水量が多い地域は石鎚山から高知方面で少ないのは芸予諸島です。矢印は卓越風向です。地域でどの向きの風が典型的に吹くかを示すものです。今治は北西が示されています。新居浜から宇摩地方は山から吹き下ろす風でこれをやまじ風と言います。局地風とも言いますが、県内ではやまじ風、肱川あらし、宇和島のわたくし風が3大局地風です。

  「水関連図」は水系図とも言います。分水界(嶺)を表現します。中予は重信水系が大きいです。今治は加茂川、中山川水系に属されていると言えます。一番大きいのは肱川水系です。

  地質学的に見て行くと、次にどういう植物が植生しているかを示す「植物図」・・・現存植生図、潜在自然植生図があります。土地の条件、気温、降水量などに左右されます。この地図では標高の高いところは針葉樹林と落葉樹林、低地は常緑広葉樹が分布している程度しか読み取れません。

今治の自然と人との関わり

  今までは今治を自然から読み解きましたが、ここでは自然と人との関わりを示す地図を紹介します。「防災図」では身近な危険を地図上に示すものです。砂防指定地、土石流の危険渓流などが示されています。地滑り危険地帯は変成帯に多く、県内では三波川変成帯(中央構造線付近)に分布しています。急峻な地形や岩盤の上の表層の地質が薄い所や雪が多く降る地域に地滑りが起こる危険性が高いと言えます。

  「親水図と水の清らかさ図」は人が水と親しむ行動する時にそれにふさわしい場所がどれくらいあるかを人の利用を水系図に重ね合わしたもの。水の清らかさ図は水系とそこの水がどれくらいきれいかを示す。青い線は海水浴場を示しますが、今治は県内でもトップクラスということがわかります。水のきれいさも今治は松山や西条、新居浜と比べて優れています。

  「シンボル図」自然・人文のシンボルを表します。来島海峡、石鎚山、宇和海・足摺の3つが自然のシンボルで人文の大きい3つは松山城、大山祇神社、南レクです。自然、人文両方の大きいシンボルを有するのは今治だけだと地図から読み取ることが出来ます。ランクを山で見ると石鎚がA、瓶ヶ森がB、笹ヶ峰や赤石山、篠山はCです。

  「すぐれた自然環境図」は自然公園、国立公園、国定公園、自然環境保全地域を表しています。今治地域は県立の自然公園として、奥道後玉川自然公園があります。楢原山、高縄山、三方ヶ森の一部です。土地利用規制図は国立公園、国定公園の中で動植物の採取が禁止されている地域(特別地区、普通地区)や開発が制限される保安林が表示されています。

「総合生活文化環境特性図」は生活、歴史、文化が平均を上回るかどうか。県全体で見たときより市町村が上回るかを見るものです。

「都道府県メッシュマップ」日本全国をメッシュで覆って生物の分布を調べるのに使います。これにGPSのコードを併用して、詳細に表現することも出来ます。

 ガガブタの分布 リンドウ科の水草。県内では高縄半島に多く、今治では波方地域のため池に多い。ため池という人為的環境に適応。葉は睡蓮に似ています。また国、県の絶滅危惧種です。

 ニホンカワトンボの分布

中央構造線の北に分布。県の絶滅危惧種。高縄山系に見られ、今治では菊間の中川地区や玉川に分布しています。山あいの小川の辺りを好みます。類似種にアサヒナカワトンボがいますが、これは中央構造線の両側に生息します。ニホンカワトンボは構造線の北にしか見られません。

 

提言

 トポフィリア

  場所愛、人が場所に抱く愛着。郷土愛とは微妙に異なる。中国系アメリカ人のイーフー・トゥアンが提唱。これまで今治を調査して様々なことが分かってきましたが、それをどうやって伝えるか。今回の話も今治とはどういう所かを浮き彫りにしていく中でどういう素晴らしいものがあるかを知る一つのきっかけになればと思いました。その根底にトポフィリアがあるのです。

 風の人たち

  県外、市外のそこを通り過ぎていく人達のことを言います。その人達が今治・しまなみを題材に研究をしていますが、その成果を発表するのも今治外。研究成果が地元に還元されていません。情報源として略奪されるだけでなく、情報を集積できないか。

 土のひとたち

  地元で腰を据えて活動している人たちがいますが、その人達だけで情報が留まって、地元に発表出来る場がいつもある訳ではありません。活動している方達も分野が違うと交流が生まれません。風と土を合わせると風土になりますが、何か風土にちなんが学問が生まれないかと考えます。

 瀬戸内しまなみ学会

そこで瀬戸内しまなみ学会というものが出来ないかと思います。九州では不知火海・球磨川流域圏学会が2005年に設立されています。今治しまなみ海道においてもそこに勝っているとも劣らないと考えますので、ICPCの取り組みが将来的にこの地域を深く勉強していく学問の集まりとしてより専念されていかれることを願います。

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